1.本訴訟に関する文書・資料

2017.07.26 訴状

原告の人数はぎりぎりでさらに増え、「服部邦子外211名」になりました。手書きで訂正して提出されました。

 

訴    状

 

2017(平成29)年7月26日

 

名古屋地方裁判所 民事第9部 御中

 

原告服部邦子外209名訴訟代理人

 

弁護士   

 

 

 

同弁護士 内 河 惠 一  

 

 

 

同弁護士 中 谷 雄 二  

 

 

 

同弁護士 岩 月 浩 二  

 

 

 

同弁護士 長谷川一裕  

 

 

 

同弁護士 篠 原 宏 二  

 

 

 

同弁護士 田 巻 紘 子  

 

 

 

同弁護士 森     悠  

 

 

 

同弁護士 小 島 智 史  

 

 

 

同弁護士 冨 田 篤 史  

 

  外10名

 

         

 

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

 

沖縄高江への愛知県警機動隊の派遣違法公金支出損害賠償請求事件

 

    訴訟物の価額   算定不能

 

  ちょう用印紙額  1万3000円

 

 

 

請求の趣旨

 

1 被告は、桝田好一に対して、金372万8252円を請求せよ。

 

2 被告は、桝田好一に対して、北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業に伴う各種警備事業に関して、愛知県警察職員が、2016(平成28)年7月13日から同年12月末日までの間、沖縄県公安委員会の指揮下において行った活動にかかる一切の公金の支出(但し、前項記載の金員を除く)について、損害賠償を請求せよ。

 

3 訴訟費用は被告の負担とする。

 

 

 

請求の原因

 

第1 当事者等

 

1 原告ら

 

 原告らは、2017(平成29)年5月15日に、被告の違法な公金支出につき、愛知県監査委員に対し、地方自治法第242条第1項の監査請求を行い、同監査委員から、同年6月27日到達の書面により、同請求を不適法として却下する旨の通知を受けた愛知県の住民である。

 

(略:当該原告の愛知県住民であることの説明)

 

…4名とも愛知県内に居住していたものであり、いずれも愛知県の住民である。

 

2 被告

 

 被告は、請求の趣旨第1項及び第2項にかかる公金の支出により、損害を被った愛知県の執行機関である知事である。

 

3 求める損害賠償請求の相手方となる当該職員

 

 桝田好一は、2015(平成27)年8月7日から愛知県警察本部長の地位にある者であり、愛知県警察所属職員に対する人件費及び職員・装備資機材の運搬費用等の支出をなす権限を有する者である(愛知県財務規則第3条2項四号)。

 

4 本件の概要

 

 愛知県公安委員会は、2016(平成28)年7月13日以降、同年12月末日頃までの間、沖縄県東村高江で行われている北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業に伴う各種警備事業への対応を名目として、愛知県警察職員を派遣(以下、「本件派遣」ともいう)した。

 

 警察法は、自治体警察を本旨とし、警察庁による主導的な介入は緊急事態に限定されているところ、本件派遣は、警察庁により直接愛知県警を含む6都府県警察本部長等に対して指示されたものであり、自治体警察の趣旨を没却し、警察法60条、36条に反する違法なものであった。

 

 また、本件派遣は、警備を名目としながら、実質は、ヘリコプター着陸帯の建設に反対する住民らを威嚇し、畏怖させ、不当な身柄拘束等により住民らの反対運動を弾圧することを目的とするものであり、多くの違法な警察活動を伴う、人権を侵害するものであった。

 

 桝田好一は、本件派遣が警察法に反し、違法に住民らの反対運動を弾圧するためのものであることを認識しながら、本件派遣を開始し、継続するために、違法に公金を支出し続けたものであるから、支出額につき、愛知県に対して、損害賠償義務を負う。

 

 本件請求の趣旨第1項は、愛知県警察本部長により開示された「機動隊超勤総括表」により明らかにされた本件派遣に要した時間外勤務手当相当額の損害賠償を請求することを求めたものである。

 

 その余の本件派遣に要した費用については、請求の趣旨第2項によって損害賠償を請求することを求める。金額が不確定であるのは愛知県警察本部長が、行政文書開示請求に対して、装備・資機材運搬費用も含めて「将来におけるテロ等の犯罪行為を容易に」する等の荒唐無稽な理由により、金額の開示すら拒んだため、包括的に損害賠償を請求することをやむなくされたものである。

 

 

 

第2 本件派遣の経過

 

1 沖縄県公安委員会は、2016年7月12日に愛知県他5都府県の公安委員会に対し、「米軍基地移設工事等に伴い生ずる各種警備事象への対応」を任務として、警察法(昭和29年法律第162号)第60条第1項の規定に基づき、警察職員援助派遣要求を行い(沖公委〈備二〉第22号)、愛知県公安委員会は、2016年7月13日、沖縄県公安委員会に対し、上記警察職員の援助要求どおり派遣することに同意した(備警発第2998号)。

 

 

 

2 沖縄県公安委員会は、2016年8月4日、愛知県他5都府県の公安委員会に対し、前項に記載の任務のため、警察法第60条第1項の規定に基づき、警察職員の援助派遣要求を行い(沖公委〈備二〉第26号)、愛知県公安委員会は、2016年8月19日、警察職員について要求どおり派遣することに同意した。

 

 

 

3 沖縄県公安委員会は、2016年9月21日、愛知県他5都府県に対し、 第1項記載の任務のため警察法第60条1項の規定に基づき警察職員の援助派遣要求を行い(沖公委〈備二〉第34号)、愛知県公安委員会は、2016年9月30日、警察職員について要求どおりの派遣をすることに同意した。

 

 

 

4 愛知県公安委員会は、2016年7月13日以降、2016年12月末日までの間、愛知県警察職員を北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業に伴い生ずる各種警備事象への対応を任務として警察職員を派遣した。

 

 

 

5 派遣人員及び規模については、情報が不開示とされているが、少なくとも沖縄県外より500人規模の警察職員が沖縄県に派遣され、沖縄県公安委員会及び沖縄県警察本部の指揮のもと、前項の任務に従事した。

 

   なお、東京都公安委員会に関する資料によれば「警視庁機動隊2個中隊140人が高江基地に着任した」とされているので、愛知県公安委員会も近似した警察職員が派遣されたものと推定されるが、派遣人数の情報公開を請求するも情報開示を拒否されている。

 

 

 

 6 沖縄県那覇市在住の沖縄平和市民連絡会北上田毅の言によると、上記派遣された愛知県警察職員は、2016年12月末日までに帰名したと言われるが日時は不明である。

 

 

 

第3 公金の支出

 

 1 前項の派遣により愛知県は、2016年7月13日より同年12月末日までの間、派遣した警察職員の人件費(給料、時間外手当、特殊勤務地手当等)及び派遣のための装備資機材(個人、部隊、装備等)の運搬費用を支出した。仲西衆議院議員の質問主意書に対する政府答弁書によれば、本件派遣中の「警察官の俸給等身分に直接付随する経費」は、当該警察官が所属する都府県が負担する旨述べられている。

 

 2 それに基づき、愛知県より支出された下記公金につき情報開示を求めたところ、時間外勤務手当の額を除き、すべて非開示となった。

 

(1)俸給

 

イ、        派遣人数 情報非開示

 

ロ、        派遣期間 情報非開示

 

ハ、        支出の根拠 職員の給与に関する条例

 

ニ、        支出の総額(イ、ロが非開示のため算定不能)

 

  (2)警察職員の沖縄県への移動につき沖縄県までのフェリー代、航空機代、装備の移動費             情報非開示

 

(3)時間外勤務手当             「機動隊超勤総括表」により開示

 

(4)特殊勤務手当       不明(情報開示の期限が2017年8月)

 

 

 

第4 公金支出の違法性の判断基準について

 

1 当該公金支出の違法性の存否を問う場合、公金支出手続それ自体に直接法令違反を必要とし、その場合に限ると解することは、住民監査請求及び住民訴訟の範囲を著しく限局し、納税者の住民監査請求権を否定することになり、地方自治法242条第1項の法の趣旨に反する。

 

2 当該公金支出は、公金支出の原因行為又は先行行為と一体化しているのであり、その原因行為又は先行行為の目的、原因行為又は先行行為自体の違法性を問う必要がある。1985年9月12日最高裁判所第1小法廷判決(昭和55年(行ツ)第84号)は、「地方自治法242条の2の住民訴訟の対象が普通地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限られることは、同条の規定に照らし明らかであるが、右の行為が違法となるのは、単にそれ自体が直接法令に違反する場合だけでなく、その原因となる行為が法令に違反して許されない場合の財務会計上の行為もまた違法となる」「前者が違法であれば、後者も当然に違法となるものと解するのが相当である」と判示する。

 

3 また、本件公金支出の原因である援助要求の目的についても議論すべきであるという意見は、2016年12月16日公表の沖縄県における「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業に伴う県外警察職員への活動費に対する支出に係る住民監査請求の結果報告」2、「監査委員の意見」(2)「請求には理由があるとする監査委員の意見」ウ「なお過去には米軍基地の警備を目的とした県外警察職員の派遣があったことなど、その経費が県の負担となることに疑問を感じる事例もあったことから監査委員としては、援助要求に対しては、その目的等についても議論すべき」と「附帯意見」を述べている。「米軍基地移設工事等に伴い生ずる各種警備事業への対応」それ自体、「警察法の派遣目的」に明示はなく、違法性を持つものである。

 

 

 

第5 本件公金支出の違法性

 

1 本件派遣は警察法60条、同法36条に違反し違法である。

 

(1) 警察法60条第1項は、都道府県公安委員会は、「都道府県警察に対して援助の要求をすることができる」と規定し、沖縄県公安委員会は、警察法60条第1項の規定に基づき、2016年7月12日に愛知県他5都府県に対し警察職員の援助派遣要請を行っている。しかるに7月12日の前日である7月11日に、警察庁は、警視庁を含む6都府県警察に対し「沖縄県公安委員会から沖縄県への特別派遣の要請が行われる予定であるが、派遣期間及び派遣部隊は次のとおりであるから、派遣態勢に誤りなきを期されたい」との通知を行っている。警察法60条第2項は、「当該都道府県公安委員会が援助要求をするときは、あらかじめ必要な事項を警察庁に連絡しなければならない」と規定しているにすぎないから、沖縄県公安委員会が援助要求決定をしていない段階で、警察庁が当該都府県警察本部にあらかじめ援助要求に応えるよう通知することは予定されてはいない。質問主意書に対する政府答弁書によれば、沖縄県警察からの「連絡」により「調整」を行ったものであるとするが、公安委員会の民主的運営と政治的中立性を確保するという存在意義を没却し、警察法60条第2項の趣旨を逸脱した権利濫用である。これは本件派遣が沖縄県にとって必要だったのではなく、政府が沖縄の基地住民の合意がないのにもかかわらず、無理矢理の工事強行を決め、それを実現するために多くの人数の警察職員(機動隊)を沖縄県外より派遣することを必要とした「政府の意図」によることは明らかである。

 

(2) 都府県警察の責務は、警察法第36条により、「都道府県の機関として、区域内における個人の生命等の保護に任じ公共の安全と秩序の維持に当たることを責務とするものであって、他の都道府県警察とは独立した存在である」(警察庁長官官房「警察法解説」(新版191頁))とされているのであるから、当該公安委員会の「頭越しに」、国の必要性や意向によって援助派遣に備えるよう指示することは権限の逸脱であり、違法である。

 

(3) 警察法59条は、都道府県警察の相互協力義務を規定し、同法61条は「居住者、滞在者その他の管轄区域の関係者の生命、身体及び財産の保護並びにその管轄区域における犯罪の鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕その他公安の維持に関連して必要がある限度において」権限を及ぼすことができるものとしている。本件援助の要請及び派遣は、「米軍基地移設工事に伴い生ずる各種警備事象への対応」を任務としているが、その目的自体警察法36条の範囲を超えるもので、違法である。

 

(4) 本件派遣は、愛知県議会に諮ることなく、愛知県民の公金でもって、長期間警察職員(機動隊)を沖縄県に派遣されたものであり、県民の意思を尊重せず、手続の違法がある。

 

 

 

2 高江ヘリパッド工事の違法性

 

(1)住民の合意の欠如

 

2016年7月に開始された沖縄県東村高江におけるヘリパッド建設は、沖縄県及び地元の住民による合意を得ることなく強行されたもので、住民らの反対行動を抑圧し、基地建設工事の遂行を図ることを目的として警察庁その他5都府県に要求された警察職員(機動隊)派遣である。

 

沖縄県議会は、これまでオスプレイの配備と海兵隊の撤退を求める意見書を可決してきたが、2016年7月21日、総理大臣その他関係大臣に対し「米軍北部訓練場ヘリパッド建設に関する意見書」を可決した。ヘリパッド建設は、「東村高江の集落を囲むように」行われ「地域の自然環境や住民生活への悪影響を及ぼす」とし、加えて「配備されるオスプレイの欠陥と危険性に対する住民不安が増している」と指摘している。「意見書」は、住民らは「精神的にも限界を超えた騒音、低周波を浴び続けている」として建設の中止を強く要請した。

 

愛知県内の市民団体は、2016年9月6日愛知県警察本部長に派遣の中止を要請した。

 

また、2016年9月9日、青井美帆(学習院大学教授)他17名の研究者、有識者は「沖縄の人権、自治、環境、平和を侵害する不法な強権発動をただちに中止せよ」との声明を発表し、住民合意の欠如によるヘリパッド建設工事の違法性を主張している。

 

(2)アセスメントの不備

 

また、「やんばるの森」は地球上で唯一残る湿潤亜熱帯照葉樹林帯であって、希少生物や固有生物が多数生息していて、オスプレイの飛行による生態系への影響が懸念されている。それに対しアセスメント(環境影響評価)も十分に行われることなく工事が強行されている。ヘリパッド建設に対する住民らの抵抗は正当であって、これを警察力で押さえつけることは住民民主主義に反し、違法である。

 

(3)ヘリパッドのずさんな工事と環境破壊

 

(a)2016年12月27日、中日新聞によると、「ヘリパッドのずさんな工事」につき、おおよそ次のように書いている。

 

「土木技術者が防衛省から情報公開請求で図面を入手し、現場と照らし合わせたところ、工期を急がせ、人手不足と手抜き工事で数々の法令違反や不備があった。

 

(b)沖縄県赤土等流出防止条例違反が存在する。すなわち、「N-1」地区に至る道路で赤土の流出を防ぐため、貯水池を数カ所設ける必要があったのに、設置せず、ブルーシートで覆うにとどめたため、赤土が海に流出し、環境を破壊する危険がある。

 

(c)道路ののり面は約80度のきつい傾斜地であるが、米軍が恒久的に道路を使用することになっているが、ガードレールなどの防護柵がない。

 

(d)G地区に至る道路ののり面に芝生が敷かれていたが、仮の盛り土をしたため、水抜きが不完全で、少しの雨で崩落している。

 

(e)H地区に至る工事用道路は、モノレールを敷設して環境を保全する予定だったが、工期が間に合わないため、森林伐採を行い、貴重な自然環境が破壊された。

 

(f)道路の切り株をそのままにして将来、道路が陥没する危険がある。盛り土の転圧が甘く、雨水による事故の危険がある等、突貫工事により、安全性を無視した工事が行われた。

 

(g)本来1年2、3ヶ月で建設するヘリパッドを4ヶ月で作らせたため、トラックの違法積載、安全ベルトやヘルメット不使用のまま作業が行われた。

 

(h)盛土の不備により水たまりや芝の剥がれが2017年2月末時点でさらに拡大している。

 

(4)オスプレイ配備の危険性と生活侵害

 

   平成2016年2月13日、オスプレイは沖縄本島の東方沖で空中給油訓練中にトラブルでプロペラを損傷し、沖縄県名護市沿岸の浅瀬に着水を試み大破した事故が起きた。アメリカ側の原因究明に目立った動きはなく、日米地位協定の壁により日本側において事故の究明はできない。そのため、下記の重大事故発生後も格別の対策が取られなかったため、今日も重大事故の危険性は続いている。なお、米軍は、空中給油はしないとしていたが、2016年12月19日オスプレイの訓練が再開された。沖縄県知事は、「言語道断」、佐喜眞淳宜野湾市市長も「遺憾」を表明している。

 

  米軍輸送機オスプレイは、ヘリと飛行機の機能を併せ持ち、上空でプロペラの角度を変化させる特殊な構造のため、機体の不安定さや操縦の難しさが指摘されている。2012年10月、沖縄にオスプレイが配備された。その年にオスプレイは海外で2件の墜落事故を起こしていた。オスプレイは開発段階から深刻な事態が相次ぎ、重大事故の危険性が指摘されている。オスプレイの主な重大事故は下記の通りである。

 

2000年4月8日 米アリゾナ州 開発試験中に墜落し19人死亡

 

2010年4月8日 アフガニスタン 墜落し4人死亡

 

2012年4月11日 モロッコ 墜落し2人死亡、2人重傷

 

2012年6月13日 米フロリダ州 墜落し5人負傷

 

2015年5月17日 米ハワイ州 着陸に失敗し2人死亡

 

2016年12月13日 沖縄県沖 不時着し2人負傷

 

オスプレイは、構造上の欠陥があると疑念がもたれている。

 

   以上の相次ぐ重大事故の発生から沖縄とりわけ本件ヘリパッド周辺の住民はオスプレイ墜落の不安にさらされている。さらに、オスプレイの運行は離着陸はじめ飛行も比較的低空のため騒音及び振動がひどい。ちなみに宜野座村の城東区における調査によれば、オスプレイの訓練飛行が実施されて以来、夜間の騒音は60デシベルに達し、夜間飛行の回数も約2倍に増加し住民の平穏な生活が妨害されている。すでに児童が体調を崩し、学校を休んだ例もあり、周辺住民らの睡眠妨害や精神的負担は重い。さらにつり下げ訓練も行われている。

 

沖縄県議会はオスプレイの配備と訓練中止を求め、2016年12月22日内閣総理大臣他に対する意見書を、同日在日米国大使及び在日米軍司令官他に対する抗議決議を採択した。

 

(5)過剰な工事費

 

 ヘリパッド建設工事については、N1地区で9回、G地区では8回契約が変更され、資源空輸や警備費等でN1地区6.1倍、G地区5.4倍とあり「異常事態」と指摘されている。

 

 

 

3 工事における具体的な警察行動の違法性

 

警察法2条第1項は、警察の責務を「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当たること」とし、同法2項は、警察の活動は「厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであって、その職務の遂行に当たっては、不偏不党かつ公正中立を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」と定めている。

 

しかるに建設現場における警察行動は警察法2条に違反し、「住民の人権を侵害する」下記の如き諸行為があり、これは沖縄県警察の管理指揮下の下に(警察法60条3項)沖縄県警と派遣された愛知県他5都府県の警察職員が一体となって行った違法行為である。沖縄県知事は「過剰な警備」と批判している。

 

(1)車輌の違法検問

 

    2016年7月19日、機動隊は米軍北部訓練場の各ゲートを通る県道70号の複数場所において、午前9時30分頃から12時半まで少なくとも検問を行い、通行する車輌をすべて停止し、何らの法的根拠を示さず運転免許証の提示を求めた。機動隊はレシーバーで連絡を取り、運転手が反対派住民だと判明すると通行を阻止したりして、前進を許さず集会の場所へ移動できなかった。

 

     ちなみに愛知県より現地に赴いた松本八重子は7月20日、山本みはぎ及び服部邦子は11月17日、北村清幸は12月9日に、新川ダムの橋元で車輌検問に遭遇した。長野県から現地に赴いた毛利正道弁護士は、11月7日、愛知県警による車両検問に遭遇し、30分にわたり違法な強制停止を命じられている。

 

一般に自動車検問には、①犯罪が発生し逃走車の緊急配備活動としての検問、②交通違反の予防摘発のための検問③一斉検問の三類型があるが今回の検問では近くで事件が発生したわけでもなく、交通事故多発地域でもないので要件に該当しない。本件検問は法的根拠を欠き、北部訓練場の各ゲートへの住民の往来を阻害することを目的とする違法な行為であり、憲法第21条に規定された平和的抗議活動をする住民及び集会参加者の「集会の自由」や「表現の自由」を妨げあるもので違法である。 

 

(2)N1地区ゲート前の住民のテントと車輌の強制撤去

 

  イ 2016年7月22日、機動隊は、N1地区ゲート前で住民を囲い込み、2時間にわたり機動隊のバス2台の間に押し込んで動けなくさせた上で、住民らの所有するテントと車輌の強制的排除を行った。かかる有形力の行使、拘束行為は、何ら法的根拠もなく違法な行為である。

 

ロ その結果、87歳の女性が5針縫う怪我をしたり、63歳の男性が機動隊員から胸を膝で押さえつけられて打撲を負い、二人とも救急搬送された。

 

機動隊員は、住民の車輌やテントの排除を行ったが、本来法治国家は自力救済は禁止されており、所有権の確認もせず、かつ何の令状も執行文もなく、排除した行為は違法であり、法的根拠はない。一斉検問も、裁判例は自動車の利用者の自由を不当に制限することにならない方法と態様でおこなわれるべきであるとされている。なお、免許証の提示義務は「無免許」「酒気帯び」「過労運転」「大型免許制限」に限定されている。

 

ハ 正面ゲートを守っていた愛知県警は、集会参加者の顔や発言、行動をビデオで撮影し、住民や参加者らの「肖像権」を侵害し続けていた。これは憲法13条による人格権の侵害である。集会参加者の撮影や録画は、集会の権利の行使に萎縮的効果を与える。

 

ニ ちなみに11月15日11時42分、愛知県警は北部ゲート入口前を警備しており、服部邦子が所属を尋ねたところ、愛知県警の「入江」「森田」と名乗った。愛知県警の機動隊員は、同所にて常時検問を行っており、そこには、尾張小牧及び豊田ナンバーの警備車が常時駐車していた。明らかに愛知県より派遣された警察職員(機動隊)は、現地において、沖縄県その他派遣の5都府県の警察職員と一体となって、行動していたことは明白である。

 

ホ 12月13日N1の入口に住民らが座り込みをしていたところ、機動隊により座り込みは南北に分断されて、機動隊員3~4人がかりで、前列にいた住民ひとりを持ち上げて運び上げ、愛知県在住の北村清幸は、道路の端に追いやられ、その左手を機動隊員に外向きにひねられた。「痛い」と言うと「痛けりゃ、立ち退く」と言われた。

 

 

 

(3)沖縄県の事前の意見聴取を行わない県道封鎖

 

イ 2016年7月22日午前6時4分より午後4時47分まで機動隊により、東村高江と国頭村安波の2ヶ所で県道70号が封鎖された。

 

ロ 県道封鎖をする際は、道路管理者に対する事前の意見聴取が必要である(道交法110条の23項)。しかるに機動隊員は緊急の必要性もないのに事前に沖縄県に対して意見聴取を行わなかった。かかる違法な県道封鎖はその後もくり返し行われていた。

 

 

 

(4)市民の不当な拘束と逮捕

 

沖縄平和運動センターの山城博治議長が、2016年10月17日、沖縄防衛局職員が北部訓練場内に設置する侵入防止用フェンス上の有刺鉄線を切った器物損壊の疑いで逮捕拘禁された。この時、十数人の市民らが訓練場に入って、ヘリパッド建設事業に抗議し、工事を監視していた。折から無許可の樹木伐採や土砂の過積載等の法令違反の行為が次々と報告されていた。防衛局職員が通報し、傍観していた警察が駆けつけ、隣接する国道に山城氏が出るまで追尾して、国道上で準現行犯として逮捕した。切断されたのは、価値2000円の鉄線1本であった。第2回の逮捕は、「公務員の腕をつかんで揺さぶった」公務執行妨害が加わり、第3回の逮捕、10ヶ月前の辺野古に「路上にブロックを置いた」という威力業務妨害罪でも遡って追起訴された。法律上、「罪を犯したことを疑うに足りる相当の理由」のない逮捕勾留は違法であり、不当に長い拘禁は違憲(憲法34条)である。逮捕勾留には山城氏の政治的表現行為に対して、その権利性に優越する利益が侵害される「相当な理由」が必要であるが、山城氏の逮捕はその「相当性」を欠く。また、山城氏の逮捕及び長期勾留は、証拠隠滅の恐れもなく、逃亡の恐れもないのであるから違法であり、回復不可能な不利益を同人に被らせた。

 

   2016年末、日本の刑事法研究者は、山城氏の逮捕勾留の処分が違法であるという緊急声明を出し、1月17日の二次集約までに65人の研究者が「逮捕勾留は違法・不当で速やかに解放すべきである」としている。この行為は憲法34条(抑留、拘禁に対する保障)に違反して違法である。

 

   山城氏は2017年3月18日夜、保釈により約5ヶ月にわたる拘束を解かれた。

 

   警察官は、座り込んでいた無抵抗の市民を理由もなく拘束し、手足や首をつかんで引き戻す等、住人に対してさまざまな不当な拘束をした。市民らを無理矢理道路脇の警察車輌と機動隊員の行列の間に閉じこめ、外に出ることを一切禁止して、炎天下の下、飲み物もなく、トイレにも行けない状況に置いた。このような規制は「監禁」である。

 

 

 

(5)取材妨害

 

   2016年8月20日午前、資材を搬入する工事車輌を止めるため、県道70号の高江橋の上に座り込んだ市民50名を機動隊員が強制排除する様子を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を機動隊が強制排除した。琉球新報の報道によると、同紙の記者は機動隊員に2度も両腕をつかまれ、背中を押されて約40メートルも移動させられ、2度目は車輌の間に押し込められた。そのため、記者は工事車輌の資材搬入等の現場に近づくことができず、取材機会を奪われた。なお記者は、琉球新報の腕章をして記者と名乗り続けたのであり、機動隊員に取材排除の意図があったことは明白である。強制排除等が違法であることはすべて述べたとおりであるが、記者に対する上記行為は憲法に保障する報道の自由(憲法21条1項)を侵害した。なお、2016年8月19日にも30分も沖縄タイムスの記者は通行止めをされ、取材を妨げられ、報道の自由を侵害された。

 

 

 

4 工事を補助した警察官らの権限外行為

 

(1)基地建設作業員の警察車輌での運搬

 

      2016年9月2日、機動隊はヘリパッドの建設作業員約10名を警察車輌に乗せて、東村高江のN1地区ゲート前に運んだ。上記機動隊の行動は、基地建設の民間業者に便宜を図るもので、明らかに警察法2条1項及び警察官職務執行法が規定する警察の責務の権限を逸脱した行為であり、違法であることは明らかである。加えて、中立且つ公平であるべきという警察法の大原則にも反しており、違法である。

 

(2)違法ダンプによる運搬の黙認

 

         2016年7月から、窓に着色フィルムを貼る等の改造を加えたり、ダンプの表示番号を記載しない、いわゆる違法ダンプによってヘリパッド建設工事のための砂利が建設現場に運搬がされていたにもかかわらず、機動隊はこれを黙認した。警察は、これらのダンプトラックを採石場から前後を警察車輌で警護して北部訓練場の工事現場まで住民の抗議に耳をかさず走行させた。これは、警察法2条1項、警察官職務執行法の違反である。さらに、この行為は警察が市民の生活の安全を守るという基本的責務に反して、ヘリパッド建設工事の業者に便宜を図ったものである。これは警察法2条2項に定める「不偏不党且つ公平中立の原則」に反し、違法である。

 

(3)ヘリコプターによる資材の搬入

 

  警察は、ヘリコプターによって建築資材の搬入を行った。

 

  1. 警察官は、資材の搬入に当たり、座り込んでいた無抵抗の市民を理由もなく拘束し、手足や首をつかんで引き戻す等、住人に対してさまざまな不当な拘束をした。市民らを無理矢理道路脇の警察車輌と機動隊員の行列の間に閉じこめ、外に出ることを一切禁止して、炎天下の下、飲み物もなく、トイレにも行けない状況に置いた。このような規制はまさに「監禁」の罪に該当した違法行為である。

     

    5 抗議行動を行っている地元住民に対して「土人」等と差別発言

           2016年10月18日、高江周辺の北部訓練場のヘリパッド建設現場において県外から派遣された機動隊員が、市民に対して「土人が」と発言し、さらに別の機動隊員が「黙れ、こら、シナ人」と発言した。この差別発言は、憲法13条の保障する個人の人格権を侵害するものであり、違法である。

             機動隊員個人の発言が不法行為を構成するものであることはもちろん機動隊が前記職務遂行中の中で発したこの言葉は市民の人権を守るべきである警察への信頼を失墜させるものである。

    2016年10月28日、沖縄県議会は、「この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒しがたい深い傷を与えた。沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離される米軍占領下に置かれ、そして今なお全国の米軍専用施設面積の約74%が集中しているもとで沖縄県民は基地があるがゆえの事件事故に苦しめられ続けてきた。

    今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない。法を守り、市民及び県民の人権を守る先頭に立つべき警察官である機動隊員らによる抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者真摯に受け止めるべきである。

    よって、本県議会は、市民及び県民の生命及び尊厳を守る立場から、沖縄に派遣されている機動隊員らによる、沖縄県民に対する侮辱発言に厳重に抗議するとともに、このようなことが繰り返されないように強く要請する」と決議した。

     

    6 結び

    このように、愛知県からの警察職員の派遣は、派遣自体が警察法60条、36条に違反し、本件工事それ自体が警察官の職務に反し、かつ警察の権限を超えて違法であることに加えて、警察自体が県民や支援者を抑圧する違法行為を繰り返していた。また、上記の通り、機動隊員は、本来権限がないにもかかわらず車輌検問や県道の封鎖を行って、車輌の停止や免許証を提示させたり、不当な身体の拘束を行っているのであり、これらは公務員職権濫用罪(刑法193条)を構成するものである。また警察のヘリコプターで、民間企業の工事の作業員や資材を搬入し、本来中立であるべき警察の職務に違反した。

    ちなみに、2016年12月16日、沖縄県住民監査請求の審査結果、監査委員1名は「東村高江における警察活動については憲法に定めた人権を侵害する事実が認められ、従って警察法2条の規定に反することは明らかである」から「公費を支出することは認められない」と認定している。

     

    第6 桝田好一の損害賠償責任

 

 桝田好一は、本件派遣が違法なものであることを認識しながら、本件派遣を開始し、継続すべく公費を支出したものであるから、違法に愛知県に対して損害を与えたものであり、愛知県に対して損害賠償義務を負う。

 

 

 

第7 結論

 

 よって、桝田好一は、愛知県に対して、損害賠償義務を負うところ、原告らは、地方自治法第242条の2第1項第4号前段に基づき、請求の趣旨記載の判決を求めて、本訴に及ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

添   付   書   類

 

1 委 任 状              210通

 

2 証拠説明書                1通

 

3 甲第1号証(写)             1通

 

4 甲第2号証(写)             1通

 

5 甲第3号証の1~8            1通